第25回 介護事業における深刻な問題 〜第4回安心と希望の介護ビジョンを受けて〜

 厚生労働省のデータによると、介護福祉士を含む福祉事業体の従業員平均年収全産業の男性労働者の平均年収511万円大幅に下回っていることが発表されました。ちなみに男性が平均315万円女性が平均281万円でした。大半の事業体の退職金に至っては、生活保護者の年収(180万円)にも満たない額(100万円前後)でした。無人島で0(ゼロ)円生活をしているならともかく(大げさですが)、業務内容の割この年収では、日々の生活もままなりません。これは、介護報酬アップすれば全てが解決できる(直接的に年収アップへ結びつく)という単純な問題ではありません
 この状況を反映してか、全産業の労働者16.2%を上回る21.6%介護職の離職率として発表されました。介護度の高い高齢者が増加している状況であるにもかかわらず、人間性や社会性を含めた優秀な人財辞めていく傾向にあり、人財不足深刻化しています。また、介護福祉士の養成機関への入学者も年々減少傾向にあります。これは、結果的モラル(従業員の人間性や社会性のレベル)の低下介護スキル低下等を招くことになります。せめて専門職としての認識高めたうえで、地方公務員並みの年収労働条件早急に整えなければ業界全体が崩壊してしまうことにもなりかねません。つまり、事業としての将来像全く描けない状況にあるということです。
 このような問題を解決する方法のひとつとして厚生労働省の第4回安心と希望の介護ビジョン(10月1日〔水〕開催)で、古川静子氏(日本化薬メディカルケア〔株〕デイサービス部部長)が報告した(http://www.wam.go.jp/wamappl/bb05Kaig.nsf/0/73324914045ce7b0492574d6002b2714/$FILE/20081002_5shiryou6.pdf)「モチベーション維持し、高める仕組みづくり構築すること」が挙げられます。そのためにも古川氏が今回報告した「組織に対して多様化しているニーズに対応するためのプログラム構築」「人財確保等の努力を評価する制度」「人事考課制度やキャリアパス導入によるやりがいをもてる勤務環境づくり」「マネジメント能力のある従業員の養成と配置」を推進していくことが事業体のみならず業界全体充実発展促進させるためにも必要不可欠なものであることは経営学の観点から見ても明白です。
 医療に関してもそうですが介護分野においても従前のシステム下では日本化薬メディカルケア(株)を含めた一部の事業体を除いて古川氏の説いたことが、ほとんど行われていない状態であったということを前述の数字が物語っています。
 古川氏は「認知症ケアの確立と医療との連携」に関しても報告しています。その中で特に注目したのは、医療と介護がお互いの立場を理解する仕組みづくり必要性を説いていたことです。確かに古川氏が指摘しているとおり、介護職の医療的知識不足もあって介護職にとって医師(医療)敷居が高い存在として認識されているということも事実としてあります。
 介護と医療双頭の鷲のようなものです。どちらかを切り落せば絶命してしまいます。しかし、強固な関係(連携)を構築すればこれほど心強いことはありません。この課題をクリアすることが、これからの医療福祉を考える際には非常に重要なものだと言えるでしょう。認知症ケアに限らず、これからの医療と介護には古川氏が説いたように「医療モデルと介護モデルの確立」と「医師と介護職の共通言語を用いたマニュアルの構築」は、顧客満足度の向上のみならず、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)を推進でていくうえでも必須条件となってくるはずです。
 同社代表取締役の宮野茂氏古川氏には何度かお会いしたことがあり(ご本人の記憶にあるかは分かりませんが…)、聡明な方々として記憶に残っています。同社が、競争激化のエリア勝ち残っているのは、最新のマーケットニーズ的確に掴みながら常に顧客の視点に立って医療連携を含めたエビデンスに基づく高品質のサービス提供し続けているからに他なりません。
 同社には何度か伺ったことがありますが、専門スキルを含めた人間性や社会性のレベルが高い人財(スタッフ)もさることながら、高品質のサービスがどのような環境提供されているかが一目瞭然になっています。
 このブログの第1回でも言いましたが、医療福祉機関サービス提供機関であって慈善事業団体ではありません。医療福祉機関に限ったことではありませんが、今後は「利益をあげることは悪だ」というような、いわゆる職人タイプの人(自我だけを押し通そうとする等、人間性や社会性の能力に乏しい情緒不安定な人:第23回参照)には勤まらなくなってきます。「正当な利益をあげること」に積極的に取り組めるマネジメント能力の高い人財(高いレベルの人間性や社会性を兼ね備えた人財)が多い事業体生き残っていくことでしょう。
 もちろん従前のシステムでも構わないという人がいても、私は、それを否定したり、新しいシステム強要したりはしません。それも選択の自由ですから…ただし、従前のシステムでも構わないということは、明治維新後廃藩置県行政改革がなされているにも関わらず、幕藩体制固執しているのと同じことだということです。
 以前もお話ししましたが、私は事業体に伺った際に必ずしていることがあります。それは、顧客の目を見ることです(顧客の真意引き出すために状況によっては修辞技法〔誘導尋問ではありません〕を併用することもあります)。顧客の目は嘘をつきません。どんなにその場を取り繕っていても普段どのような環境でサービスが提供されているかは、真実の全てが映し出されている顧客の目を見れば分かります。決して隠し通せるものではありません。認知症であれば、それは顕著に表れます。
 皆さんも宮野氏古川氏講演をどこかで聴講できる機会がありましたら、参加することをお奨めします。宮野氏の許可がいただけるのであれば、事業体を見学してみるのも良いでしょう。その良さがより分かると思います。
 当初からこのブログを購読されている方なら分かると思いますが、私は、真実(ゴシップ一切なし)しかお話ししていません。報道畑が長かったもので、良いものは「良い」、悪いものは「悪い」とハッキリ発言するため(さすがに「悪い事業体」に関して、ここで実名は出せませんが…)、医療福祉業界に従事する人にとってはキツく感じてしまうかもしれません。しかし、「悪い」ものを「良い」と虚偽の発言(含ゴシップ発言)をすることは、このブログの読者だけでなく、世間をも裏切ってしまうことになります。その点をご配慮いただき、末永くお付き合いいただければと思っています。

第3回 顧客が勝敗を決める

 対象者や受給者を“利用者”と言い換え、いつの間にか福祉の世界でも“福祉サービス”と言っています。ですが、実際の中味がどれほど変わったのかというと疑問があると言わざるを得ません。少なくとも介護保険が始まるまでは何も変わりませんでした。現在も本当の意味での“サービス業”だと思っている福祉関係者は極一部にすぎないのが現状です。
 医療もサービスとは縁遠い世界でした。少し前はビジネスと言っただけでも目くじらを立てて怒る医師もいました。ところが、競争が激化状態になるにつれて医療サービスという言葉に実体が伴い始めてきています。少しでも患者本位になることは国民にとっては非常に喜ばしいことです。
 ところで、サービスに対しては誤解があるように思います。この誤解を解かなければ、いくら福祉はサービス業であるといっても解ってもらうことはできません。
 第1回目でも若干触れましたが、サービスはタダという誤解があるということです。かなり前の話ですが、友人がタダでコピーしてくれるところを見つけてきたと言っていました。コンビニの“コピーサービス”という看板を見てきたのです。これは笑い話ですが…
 「サービスはタダ、タダだからサービス」は一般にもある誤解です。まして福祉もサービスですから、タダに決まっているという考え方でしょうか?
 ところが、経済社会では、経済のサービス化といわれる現象が進んでいます。総務省の「事業所・企業統計調査」によれば、企業数でも従業員数でも第1次産業を除いた産業の4分の1がサービス業です。もはやサービス業抜きにして日本経済は成り立ちません。しかもサービス業こそが成長産業なのですから、サービスはタダなどという認識では時代に取り残されてしまいます。
 サービス業だけが他人に奉仕する仕事だという誤解もあります。そんなことはありません。サービス業だけでなく、製造業や流通業であっても報酬をもらう仕事は自分以外の人のために仕事をして報酬をもらうことができるのです。
 かつてホームヘルパーは家庭奉仕員と呼ばれていました。単にカタカナに換えたというだけではなく、“奉仕”が家政婦よりも格下の印象を与えるという理由もあったようです。福祉は“奉仕”ではありません。
 ある介護老人保健施設の施設長が言っていたことが頭からいまだに離れません。「教えてあげているんだから。あなたのためにやってあげているんだから」と…例え、この言葉を表立って出さなくても態度の節々に出てくるので、顧客は特に敏感に察知します。この介護老人保健施設の施設長がサテライトでやっている株式会社もそれに倣っているわけですから最悪です。
 また「この場合は、こうしたほうが良いのではないでしょうか?」と言うと、「いいから言うことを聞け!」と逆ギレ状態になってしまいました。その結果、修復できない事態に陥った際には自分の失態を人に擦り付けたあげく「ごめんなさい」の一言で責任を押し付けて済ませてしまう。当然、施設長がそうですから従業員もそれに倣う人だけが残り、マーケット評価の高い優秀な人財は流出してしまいます。
 このような姿勢は、ホームページのリンク状態からも垣間見ることができます。本体の医療法人側からは、介護老人保健施設のページが最新の状態にアップされているのに対し、介護老人保健施設側からは、医療法人のページが更新されておらず何年も前の状態のままになっています。しかもそれは1枚の概観写真と移転前の住所が掲載されているだけです。理念においても本来は法人全体に共通する一本筋が通っているものが浸透しているのですが、この介護老人保健施設は筋を通すどころか独自のものを勝手に掲げ、まさに暴走状態にあります。民主主義という名を掲げていながらミサイルを放ち、国際情勢を無視して核実験までしたどこかの国に似ているような気がします。
 福祉は、医療なくしては充実したサービスを顧客に提供することはできません。介護老人保健施設側が本体である医療法人と事実上断ち切ってしまった結果、必然的に集客力も落ちています。新規顧客も見込めません。どういうつもりで法人内にある病院機能評価Ver5.0まで取得している医療機関とのリンクを自ら断ち切ってしまったのか、その真意は解りませんが…
 この施設長がサテライトでやっている株式会社の方も、このような感覚でやっているわけですから更に悪化の一途に拍車をかけている状況です。まして「これからの医療福祉の経営は、こうあるべき」と自分が施設長をしている介護老人保健施設を事例に出して語っても何の説得力もありません。
 ホテルコストの導入等に始まり、顧客はその対価に見合うサービスを今後ますます求めてくるでしょう。介護保険創設以来、民間企業とのサービス競争が激化しています。このような自由競争の行く先は…それはサービスを利用する顧客が決めることなのです。

HOME |

Calendar

PREV≪  2008-10  ≫NEXT
S M T W T F S
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

Advertisements


医療福祉機関の関係者の方々だけでなく、サービスを利用する方々にもご参考にしていただければと思います。