第5回 Web2.0時代に先乗り

 皆さんは、Web2.0という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。最近、いたるところで目にしたり聞かれたりすることがあります。私も当初「Webにバージョンというものがあっただろうか?」と思いつつ、以前調べてみたことがあります。Web2.0について私なりにまとめてみました。
 現在のインターネットやインターネットサービスWeb1.0や1.5と総称しており、次世代型のインターネットやインターネットサービス、あるいはそれを構成する仕様のことをWeb2.0というそうです。つまり、製品やサービスのバージョンではないということです。では、Web1.0や1.5あるいは2.0とは、どんな意味で使われているのでしょうか。
 Web1.0とは、あまり更新されないスタティックなHTMLで作られたWebのことで、Web1.5とは、コンテンツマネジメントシステムを利用して“いつも変化がある”ダイナミックなWebのことです。そして、Web2.0とは、サーバやコンテンツ同士がシームレスに連動され、インターネットが社会的なネットワークとして動作すること。すなわちインターネット全体がコミュニケーションプラットフォームとして“連動”“共鳴”して進化するということです。
 Web1.0、1.5は、ある程度イメージができますが、Web2.0の方はというと、将来像ということもあって抽象的な表現になります。Web2.0時代を前に、ユーザーが経験しておくべき項目を思いつくままに10個ほど挙げてみました。
(1)ネットで知り合った人と会い、リアル付き合いをする。
(2)Q&Aサイト等で質問、回答をする。
(3)欲しいものについて検索し、掲示板やブログなどから口コミ情報を調べる。
(4)近くの書店で見つからなかった本を、オンライン書店で買ってみる。
(5)RSSリーダーでブログを読む。
(6)ブログを持ち、自宅以外の場所からコメントのチェックや更新をする。
(7)商用サイトに要望を出し、取り入れてもらう。サービスを改善させる。
(8)ソーシャル・ブックマークで情報集めをする/自分もブックマークする。
(9)音声や動画の配信サービスを利用する。
(10)ネット上で議論をする。
 そこで、Web2.0になると何が変わるのでしょうか。エンドユーザーの立場から言うと、Webの利用モデルが“情報の発信→情報の受信”から“(不特定多数での)情報共有”になるということです。
 例えば、皆さんの法人のホームページにブログをリンクさせるというのも1つの方法です。ですが、このブログも何でも良いというものではありません。そもそもブログとは、公開される日記のことなので、現場のスタッフ(できれば全スタッフ)が持ちまわりで、今日一日あったことや感じたことを短くても良いので、せきららに書いたものをブログにアップさせることでも良いでしょう。
 何も文章をうまく書く必要はありません。逆にうまく書きすぎているとせきららさにかけて説得力がなくなってしまう可能性があります。訪問者は、ブログに書かれた現場の実体験に共感を抱き、ここからその法人に対して現実に近いイメージを感じ取ります。そして、そのブログを見た人からコメントが書き込まれてきたりもします。場合によっては、そのスタッフに逢いたい(サービスを受けたい)という人が増えるかもしれません。ブログに公開されない形でコメントが届く場合もあるので、その際の配慮は必要ですが…
 今のところWeb2.0に関しては、テクノロジーやビジネス戦略についての話題が多いですが、エンドユーザーにとってWeb2.0は今までと何が違うのかというコミュニケーション的側面からの話題も出てきています。
 ユーザーにとって、従来のWebとの最も大きな違いは、一方的に“受け取るメディア”から、“参加(発信も)するメディア”に変わることです。ここで“参加”というのが重要なポイントになっていきます。ただし、これは単に情報を発信するというのではなく、お互いの“知を共有”しようというものだということです。
 このように、ブログの登場によって今まで“少数対多数のメディア”だったWebが“多数対多数のメディア”に変わろうとしているのです。“多数対多数”というのも適切ではないかもしれません。“多数間のメディア”といった方がより相応しいでしょう。そして、そこでなされるのは“情報発信”や“情報受信”というより、“情報共有”と考える方が適切ではないでしょうか。かく言う私自身もこのブログ(パソコン版と携帯版)を通して皆さんとコミュニケーションをしています。
 一方で、Web2.0への流れの中で生じる問題点というのも存在します。主だったものとしては、3つあります。
 1つ目は、信頼性の問題です。これは、集合知は本当に正しいのか。つまり、多数によって支持されていることが必ずしも正しいとは限らないということです。
 2つ目は、ユーザーが情報共有モデルを理解できるかということです。ここが一番軋轢を生みそうなところでもあります。卑近な例を挙げれば“無断リンク禁止”問題です。“情報発信→情報受信”モデルでは、情報を発信している者がその情報に対して、あらゆる権利を持っていると考えられがちだったからです。また情報共有モデルにおいては、必ずしも誰とでも情報共有したいわけではないこともあるということです。その時に情報の公開範囲を適切に設定できるかがキーポイントになります。技術的に解決できる部分もありますが、まずユーザー側が“情報共有”ということを認識する必要があります。デフォルトでは、すべてに対して“公開”なのですから…
 3つ目は、著作権の問題です。これは、2つ目とも大きく関わりますが、コンテンツがシームレスに流通するようになると著作権の問題がクローズアップされてきます。情報のコモンズ(共有地)において、情報提供者の権利をどのように保護するかがクリエイティブ・コモンズの手法の1つの解となりそうです。
 ここでWeb2.0にあえて定義づけをするならば、『Webをプラットフォームとして位置づけ、オープン志向・ユーザー基点・ネットワークの外部性といったインターネット本来の特性を活かす思想に則って提供されるサービスの次世代フレームワーク』といったところでしょうか。
 私の知る限り医療福祉界で、このWeb2.0に対応したホームページがある法人を見たことはありません(美容整形の分野で比較的近いものは2〜3見たことはありますが…)。
 広告活動の制限が多い医療福祉界で、最大かつ唯一といっても過言ではないものが、Webによる戦略です。少しずつ移行はしているものの現在、医療福祉以外の業界における広告戦略は、電波や紙による媒体が主流ですが、これからは、Webによる戦略が事業の勝敗を決めることになるでしょう。世界の大手広告代理店といわれている会社では、現在Web戦略にシフトしています。
 皆さんの法人でもWeb2.0時代への先乗りを一度検討してみてはいかがでしょうか。

第4回 “サービス”似て非なるもの

福祉サービス”は本来の意味でのサービスではありませんでした。意外に思われるかもしれません。似ているのは“サービス”という言葉だけで中身は全く別なものです。
 すなわち、それは社会福祉基礎構造改革の7つの基本的な考え方のなかにはっきり示されています。周知のとおり、その第一番目にあげられているのが“サービスの利用者と提供者との間の対等な関係の確立”です。今まで上下関係で提供されていた福祉を対等な関係に改めようというものです。
 民間企業では、従前の福祉とは逆の上下関係で仕事をしています。デパートやレストランなどの接客サービスで、深々と頭をさげるのは店員です。お金を払っていただく人を“お客様”と呼ぶことはあっても“利用者”などと呼ぶ店はひとつもありません。
 それにしても、顧客が“下”のサービスなどありえないことは誰の目からみても明らかなことです。自分に置き換えてみれば こんなに分かりやすい話はありません。レストランやホテルに行って、顧客が“下”に置かれて「いつもすみません」とか「お世話になります」とか言っていなければならないのです。このようなことは考えられるでしょうか?
 それでは、福祉ではどうしてこうなるのでしょう。それは今まで措置制度というものがあり、お金を払う人と利用する人が別々だったからです。
 例えば、社会福祉法人公共住宅を受注した建設業者と同じです。建設業者は役所から受け取った図面どおりに建物を建てます。そこに入居する住民の住み心地は建設業者の念頭には一切ありません。社会福祉法人は、“公の支配に属する福祉事業者”として、措置を受託しています。社会福祉法人を認可したのも、施設整備に補助金を出したのも、措置費を支払うのも行政です。
 モノとちがって、サービスには形がありません。サービスの質は顧客がいかに満足したかで測ります。顧客は満足に対して、お金を払います。料金が高いばかりで居心地の良くないホテルやおいしくないレストランには二度と足を運びません。まして、それが口コミで広がっていったらどうでしょう。考えるだけで恐ろしくなります。インターネット社会となっている現在では、その広がり方は爆発的なものとなります。
 居心地や味だけではありません。一流のホテルやレストランでは教育訓練されたスタッフが丁寧な接客サービスを提供しています。それは、顧客の心の満足度を高めるためです。
 今までの福祉は、行政処分した措置を受託していただけと言っても過言ではありません。つまり、サービスではないのです。“顧客満足”を至上の価値とするサービスとは似て非なるものなのです。社会福祉法人はサービス業としては民間企業に50年は遅れていると言われています。
 余談ですが、前回述べた介護老人保健施設の施設長がサテライトでやっている株式会社の従業員にこのような人がいました。この人は、その施設長(なぜか対外的には社長や代表とはしていません)に大変好かれている人のようで、施設長の絶大なる支持を得て、本体の医療法人から介護老人保健施設、そしてサテライトの株式会社へ異動し、社内でもその施設長に次ぐポジションにいる人です。
 「この人、前にうちにいて自殺した職員(株式会社なので社員なのでは?)の○○さんに似ていない(笑)?」とそのサテライトの株式会社に関わった外部の方の顔写真を添付ファイルにして社内中に回覧メールをしていたのです。それを他の従業員に「これ、どう思いますか?」と言って見せられた時、私は愕然としてその場に立ち竦んでしまいました。まして、そういうことをしている人に「医療福祉は、民間企業のように甘い世界ではありません(こういう言い方もどうかと思いますが…)。民間企業の人たち以上に相手の気持ちになって接していかないといけません。それが接遇というものでしょ!」と言われても、開いた口がふさがりません。
 当然ですが、そのメールを私に見せてくれた従業員は、その後、間もなくしてその会社を辞めていったそうです。私と同じ感情を抱いたのでしょう。離職率が高く、集客力と収益率が右肩下がりになっていることを他の所為にしている会社であることも頷けます。事業は、やればやるほど空回りでマイナスが更なるマイナスを生むスパイラル状態です。
 風の便りで耳にしたのですが、現在その人は、その施設長の支持を今まで以上に受けて接遇の講師にもなっているそうです。貴重な時間とお金を費やして、その人の講演を聴く受講者が不憫でなりません。そして「私は講師でもあるんだから、下働きのように前面に出て応対はしません」とも言っているようです。やはりトップがトップなら従業員も従業員です。
 皆さんは、このような経営者やそれに倣う従業員がいる事業体をどのように思われるでしょうか?
 第1回目で紹介した中村秀一氏(厚生労働省社会・援護局長)の発言にもその意図が含まれていたと思いますが、“経営力に伴う本来あるべき顧客を満足させるサービスを提供し続けていけるかどうか”これから問われていくのは、このようなことなのではないでしょうか。

第3回 顧客が勝敗を決める

 対象者や受給者を“利用者”と言い換え、いつの間にか福祉の世界でも“福祉サービス”と言っています。ですが、実際の中味がどれほど変わったのかというと疑問があると言わざるを得ません。少なくとも介護保険が始まるまでは何も変わりませんでした。現在も本当の意味での“サービス業”だと思っている福祉関係者は極一部にすぎないのが現状です。
 医療もサービスとは縁遠い世界でした。少し前はビジネスと言っただけでも目くじらを立てて怒る医師もいました。ところが、競争が激化状態になるにつれて医療サービスという言葉に実体が伴い始めてきています。少しでも患者本位になることは国民にとっては非常に喜ばしいことです。
 ところで、サービスに対しては誤解があるように思います。この誤解を解かなければ、いくら福祉はサービス業であるといっても解ってもらうことはできません。
 第1回目でも若干触れましたが、サービスはタダという誤解があるということです。かなり前の話ですが、友人がタダでコピーしてくれるところを見つけてきたと言っていました。コンビニの“コピーサービス”という看板を見てきたのです。これは笑い話ですが…
 「サービスはタダ、タダだからサービス」は一般にもある誤解です。まして福祉もサービスですから、タダに決まっているという考え方でしょうか?
 ところが、経済社会では、経済のサービス化といわれる現象が進んでいます。総務省の「事業所・企業統計調査」によれば、企業数でも従業員数でも第1次産業を除いた産業の4分の1がサービス業です。もはやサービス業抜きにして日本経済は成り立ちません。しかもサービス業こそが成長産業なのですから、サービスはタダなどという認識では時代に取り残されてしまいます。
 サービス業だけが他人に奉仕する仕事だという誤解もあります。そんなことはありません。サービス業だけでなく、製造業や流通業であっても報酬をもらう仕事は自分以外の人のために仕事をして報酬をもらうことができるのです。
 かつてホームヘルパーは家庭奉仕員と呼ばれていました。単にカタカナに換えたというだけではなく、“奉仕”が家政婦よりも格下の印象を与えるという理由もあったようです。福祉は“奉仕”ではありません。
 ある介護老人保健施設の施設長が言っていたことが頭からいまだに離れません。「教えてあげているんだから。あなたのためにやってあげているんだから」と…例え、この言葉を表立って出さなくても態度の節々に出てくるので、顧客は特に敏感に察知します。この介護老人保健施設の施設長がサテライトでやっている株式会社もそれに倣っているわけですから最悪です。
 また「この場合は、こうしたほうが良いのではないでしょうか?」と言うと、「いいから言うことを聞け!」と逆ギレ状態になってしまいました。その結果、修復できない事態に陥った際には自分の失態を人に擦り付けたあげく「ごめんなさい」の一言で責任を押し付けて済ませてしまう。当然、施設長がそうですから従業員もそれに倣う人だけが残り、マーケット評価の高い優秀な人財は流出してしまいます。
 このような姿勢は、ホームページのリンク状態からも垣間見ることができます。本体の医療法人側からは、介護老人保健施設のページが最新の状態にアップされているのに対し、介護老人保健施設側からは、医療法人のページが更新されておらず何年も前の状態のままになっています。しかもそれは1枚の概観写真と移転前の住所が掲載されているだけです。理念においても本来は法人全体に共通する一本筋が通っているものが浸透しているのですが、この介護老人保健施設は筋を通すどころか独自のものを勝手に掲げ、まさに暴走状態にあります。民主主義という名を掲げていながらミサイルを放ち、国際情勢を無視して核実験までしたどこかの国に似ているような気がします。
 福祉は、医療なくしては充実したサービスを顧客に提供することはできません。介護老人保健施設側が本体である医療法人と事実上断ち切ってしまった結果、必然的に集客力も落ちています。新規顧客も見込めません。どういうつもりで法人内にある病院機能評価Ver5.0まで取得している医療機関とのリンクを自ら断ち切ってしまったのか、その真意は解りませんが…
 この施設長がサテライトでやっている株式会社の方も、このような感覚でやっているわけですから更に悪化の一途に拍車をかけている状況です。まして「これからの医療福祉の経営は、こうあるべき」と自分が施設長をしている介護老人保健施設を事例に出して語っても何の説得力もありません。
 ホテルコストの導入等に始まり、顧客はその対価に見合うサービスを今後ますます求めてくるでしょう。介護保険創設以来、民間企業とのサービス競争が激化しています。このような自由競争の行く先は…それはサービスを利用する顧客が決めることなのです。

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