第20回 治さない医療にお金を出したくないというのは・・・
- 2008-06-10
- 20:08
今回は、「治さない医療」に関して、医療機関が今後取り掛からなければならないことについてお話ししたいと思います。
まず療養病床に関してお話ししたいと思います。皆さんも報道等でご存知かと思いますが、厚生労働省は医療費抑制を図るために2011年度末を目処に療養病床を25万床まで削減するとしています。もともと療養病床削減の根底には、医療給付費(3,000億円)を削減するという意図があったことを忘れてはいけません。
しかし、結果として医療療養病床では、55,000人以上が行く宛てもなく放り出されてしまいます。介護療養病床も合わせるとその数は、実に11万人にもなると言われています。これは、今後の抑制政策全体にも波及してくることなのです。そして、顧客の追い出しを誘発するとともに多くの医療難民を生み出すことにもなります。
一方、高齢者を対象に考えても、現在、様々な事業体で推進されてはいますが、日本では、高齢者向け住宅の提供数が需要数に追いついていない事情から考えても療養病床の存在意義は大きいはずです。急性期病院の平均在院日数短縮化も考慮すると、逆行した考え方ではないでしょうか。
行政側は、「入院している患者のうちの半数は、医療の必要度が低い患者だ」として、入院費の減額を一昨年実施しました。必然的にこのような顧客(患者)が大半を占める医療機関にとっては、存続が危ぶまれる状態になります。一方で、「住み慣れた地域で生活をしていただくための在宅医療だ」として、強制に近い形で在宅医療にシフトさせられる場合もあります。本当にそうでしょうか。これは、引き取った家族がBurn-outすることにもなりかねない場合も出てくる可能性もあります。特に首都圏エリアでは顕著に現れてきます。
在宅医療が成立する要件として考えられるのが、最低でも「本人の希望」「病状」「家族介護」の3つの要件が必要不可欠になります。そして、何よりも重要なのは、「家族が在宅で看たい」という強い意思がなければ長く続きません。この要件が揃わなければ療養病床から在宅医療へのシフトは困難を極めることになります。医療が進歩したとはいえ、在宅医療の環境に入院医療と同等のレベルのものを求めるには限界があります。
前回もお話しましたが、こういう事態になった根幹のすべては、日本の医療福祉制度そのものが中途半端なものだからです。今までの動向を見ると、日本の医療福祉制度は、米国型に近づいてきているからではないでしょうか。最近では、今年の4月からスタートした後期高齢者医療制度に関連した報道で、様々な問題点が浮き彫りとなって、6月8日(日)に開票された沖縄県議会議員選挙においては与党系が過半数割れしたことが記憶に新しいものとして残っているはずです。
現状では、前述した療養病床削減等の問題もあって、緩和ケアに関しても緩和ケア病棟に入るか、在宅医療の道しかありません。現状から緩和ケア病棟を設ける場合、療養型病棟の約5倍の面積を必要とすることもあって、医療機関側の立場からみて、緩和ケア病棟として認められるには、既存の建物の大掛かりな改修工事をするか、あるいは新たに建設するしかありません。そのため、緩和ケア病棟数は、全国的に見て圧倒的に少なくなっています。今年の4月からスタートした平成20年度診療報酬改定においても在宅重視の志向を強めています。決して在宅医療に反対しているわけではありません。在宅医療が成り立つのも、緩和ケア病棟をはじめとする療養病床がバックヤードがあるからなのです。
これらの情勢を踏まえると「治さない医療にはお金を出したくない」という行政の意図が垣間見られます。これでは「その人らしさをもって最期まで生きる」というサービスは提供できません。
緩和ケアの今後の方向性としては、緩和ケアは後方支援型システムに位置づけられるため、特に緩和ケア部門を既に設けている医療機関は、ターミナルケア(terminal care)からシームレスケア(seamless care)、そしてパラレルケア(parallel care)へと進展していかなくてはならなくなるでしょう。
そのためにも、現在も拡大しつつある「行政─医療機関─顧客(患者)」にある情報格差(information gap)を共通認識と共通言語を構築(informed consent:IC)した上で、多くの医療機関側が抱いている「援助における支配性」的な考え方を払拭して、顧客と共鳴(resonance)していくことが必要とされるのではないでしょうか。それによって厳しい環境下においても、集客力を維持し、増やしていくことが可能になります。そして「医療とは何か」「医療従事者として何をすべきか」「医療機関として何をすべきか」を今一度改めて考えてみる必要があるのではないでしょうか。
前回お話しした内容も含めて、今後のサービス提供機関としての医療の方向性を皆さんの法人でも検討されてみてはいかがでしょうか。





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